ずっと行ってみたかったんですよね。ただ、重い腰が上がらなかっただけで。そして、そんなワタシの背中を思いっきり押してくれたのが、5年に一度だけ訪れる長期連休なのでした。早朝に出発して、3時間かけて徳島へ。到着したのは、大塚国際美術館。ずっと来てみたかった場所。
たどり着いた先で待っていたのは、レンブラントの「夜警」。光と影で人々を劇的に描き出したその絵の前に、今は絵を見上げる人々の影が立つのでした。観る者と観られる者が、いつのまにか入れ替わっているように。
腰は重かったけれど、動いてみれば、こんな景色に出会えるのです。

足を踏み入れた瞬間、蘇ってきた記憶。もう何十年も前に新婚旅行で訪れた、ヴァチカン市国の記憶でした。あの時、本物のシスティーナ礼拝堂で見上げた天井画。そのときと同じ感動が、ここにもあったのです。
ただ、蘇ってくる記憶の輪郭はどこか曖昧で、確かに見たはずの映像も、今となっては怪しくて。大体、人間の記憶なんて、そんな頼りのないものなのかもしれませんが。
館を出て、目に飛び込んできたのは睡蓮の池。その色彩に心が動きます。睡蓮の花が点々と咲いて、木漏れ日が揺らめく情景。いつか見た絵画の中の光と、本物の光が、ここでようやく重なった気がしたのでした。
池の周りのテラスには、昼食をとる大勢の観覧者。そこから漂ってくるカレーの匂いに負けて、写真もそぞろにカウンターへ。ワタシが注文したのは、夏野菜たっぷりのヴィーナスカレー。大きめの茄子がゴロゴロと(笑)


満腹になったところでもう一度、絵画の世界へ。ベラスケスの間。「ラス・メニーナス」の前に立つ人影もまた、絵の中の誰かに見られているような気がしてきて不思議な感覚。
そういえば、レンブラントの「夜警」もそう。見ているつもりで、いつも誰かに見られているような感覚。それが、美術館の不思議な魅力なのかもしれませんね。
結局、日帰りで十分楽しめてしまったのです。重い腰を上げるのに何年もかかったというのに。そして、今回いちばん意外だったのが、運転手として連れてきた息子がいちばん楽しんでいたこと。いえ、むしろ、絵画についての知識もワタシたちより豊富だったようで。

