水鏡の季節はどうしても天気予報が気になります。iPhoneのお天気アプリを立ち上げて、夕刻の天気をチェックすることしきり。けれど、どのお天気アプリも予報は同じで、17時からは曇りですの一点張り。どうして一番美味しい時間帯に限って曇りなのかと問いただしたい気分なのですが、そんなことを言っても肝心の空模様は変わりそうにありません。
本谷の棚田。山の高台に位置するその棚田は枚数は少ないのですが、瀬戸内海とそれに浮かぶ島々が一望できる眺望が魅力的なロケーションです。昨日訪れた際に水が張っていることは確認済みであとはワタシの気分次第なのですが、水鏡フェチのワタシとしては「行かない」という選択肢はあり得ませんでした。それは例え天気が優れないとしても。
17時過ぎ。またちょっと到着が早かったようです。昨日は先客が一名いらっしゃったのですが、今日は今のところ貸し切りの模様。最初は車の中で仮眠でもと思っていたのですが、あまりにも海が綺麗だったので機材チェックも兼ねて少し撮ってみることにしました。




太陽は相変わらず雲の中。けれど、それが逆にいい塩梅。ソフトフィルターをかけたような優しい光が海を照らして、ゆらゆらと煌めく海原は夢心地。シャッターを押す指も自然と軽やかで、もうすでにかなりの枚数を撮ったような気がします。そして、ここでカスタム強めのハンターカブ(?)に乗ったお兄さんが颯爽と登場。さて、綺麗に染まるといいのですが。


時刻は18時。未だに姿を現さない太陽は相変わらずソフトフィルターの向こう側。三脚を立てて待つワタシはいつもの構図でその時を狙うのですが、ファインダーに映るのは夕暮れの色に染まる様子のない棚田の風景。とはいえ、この情景だけでも十分なほど美しいと思えるのです。

18時30分。消える光と淡く淡く申し訳なさげに染まる空。「もうこれ以上は無理かもね。さて、帰りますか。」と、カメラとレンズをバッグに仕舞うのですが、何故か後ろ髪引かれる思い。カスタムカブのお兄さんも粘ってるようなので、もう少しだけ待ってみることにしました。



なんかきた。なんかきましたよ。海面にゆらゆらと夕日の輝き。慌ててカメラを準備して望遠ズームで狙います。そして、ついに登場した太陽は思いもかけずドラマティック。ありったけの輝きを見せつけながら足早に山陰に落ちてゆくのでした。もちろんその後の数分もほろ酔い加減のいい色で、結局はいつものようにどっぷりと日が暮れるまで居残ったのでした。ただ、この日はカスタムカブのお兄さんとふたりで、ですが。