水鳥に会いに来たんですよ。「今日もいるかな?」と、車を降りた途端に見つけた青鷺はやはりフォトジェニック。ポンジュース発祥の地の近く、食べた後に歯の裏にくっつくことで有名なお菓子を製造している工場の駐車場の隣にあるこの小さな港は、定期的に訪れたくなる撮れ高の高いお気に入りのロケーションなのです。時刻は16時23分。ホワイトバランスが崩れる時間まであと一時間。夕景を狙うまでは水鳥と戯れることにしましょうか。

青鷺の佇まいは美しいですね。佇まいだけではなくフォルムもそうなのですが、とにかくずっと追っていきたくなるほど魅力的だと思うのです。ただ、ワタシの手持ちのレンズでは岸辺にいてくれなければ撮ることができないという制約付き。もう少し長いのが欲しいと思うこともあるのですが、それは金額的にちょっと。ボディに怪しげなところがあるので、それを考慮するとレンズに散財するわけにはいかないのです。

水鳥と戯れることひとしきり。ワタシとの追いかけっこに飽きてしまったのか、青鷺は何処かに飛び去ってしまったのでした。となれば、被写体を水鳥から廃船に乗り換えるのですが、ここで登場するのがお馴染みのND1000、長秒露光の必須アイテムです。波がないときを狙ってレリーズすれば、水鏡の中に廃船が浮かび上がるという寸法。ただ、よっぽどうまくやらなければ失敗作ばかりを量産することになるのですが。

暮れてくる空。いつものように港の奥のほうに歩みを進めます。けれど、今日の空はご機嫌斜め。期待とは裏腹に、あっさりと染まって静かに収束してしまうのでした。「さて、帰ろうか。」

三脚を担いで車まで戻ってきたワタシを待っていたものは、廃船が水に揺蕩う寂れた情景。遺されたエンジンと操舵機は貝に侵食されて、それはまるでどこかの遺跡に迷い込んでしまったかのように神秘的なのでした。染まらなかった夕景の代償がこの神秘的な情景であるのなら、写真の神様もなかなかに粋な計らいをするものだなぁ、と。

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