その音は妄想の世界で鳴る

楽しみにしていた吉澤嘉代子さんの新譜が届きましたよ。彼女にとって3枚目のフルアルバムにして、初期3部作を締めくくる作品です。「屋根裏獣」というタイトルからして普通じゃないことは想像していましたが、やはり普通ではありませんでしたね。それもとびっきり。1曲目の「ユートピア」からしてすでにヘンです。楽園と謳うからには、ウキウキするようなオープニングを想像するじゃないですか。ところが、実際に聴こえてきたのは、妖しげな弦楽器が不安と恐怖を煽るようなイントロダクション。そう、ちょっと幻想的で怖そうなジャケットの世界観そのもの。あぁ、そうか、今回のアルバムはこの路線でいくのね・・・と思いきや、続く「人魚」では優雅なストリングスと繊細なガットギターが印象的で、あまりにも静かで美しいのです。そして、その雰囲気のままガットギターだけを残して演じられる「カフェテリア」の穏やかなメロディ。素晴らしい。

この冒頭の3曲だけですでに吉澤ワールドへ引きずり込まれているのですが、この後、物語は更なる妄想の世界へ。屋根裏に住む居候に恋をする少女の物語だったり、地獄行きのタクシーに乗ってしまった夫婦の話だったり、麻婆が辛すぎて人々が死んでしまう話(舞台は地獄の釜の底)だったり。個人的にお気に入りなのは、6曲目の「えらばれし子供たちの密話」。学校がつまらないと感じる子供たちが連絡網を辿って秘密の暗号を見つけようとする物語。暗号が見つかれば親を殺して家出するハズなのに、結局できなかった(?)というもの。かなりヘヴィな内容なのですが、曲自体はグルーヴィでメロディラインはラップ調で軽やかに歌われていて、そのギャップがクセになりそうです。いえ、間違いなくクセになります。彼女の場合、かなり辛辣で重い内容の歌詞が多いのですが、それを感じさせず、かなりポップにさらりと聴かせてしまう才能に長けているような気がします。唯一無二の才能。いやぁ、素晴らしいなぁ。



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吉澤嘉代子
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